2014年1月

 ソウルから南に約100kmに天安市がある。ここにある「白石大学(旧天安大学)」の日本人教授とネットで知り合いになったので昨年末に時間を作って大学の研究室を訪問し面談した。昼食をご馳走になって、その後近くにある独立記念館を見学した。

 寒い平日の午後3時頃だったが軍人や小学生などが訪れていた、12年前の2001年の5月に3三回目の訪問しているので今回で三四回目の見学ということになる。前回は入場料が1600ウオンであったが現在は無料になっていた。

 正面の広場にはおびただしい国旗(太極旗)がはためいていた。側道には独島(竹島)は歴史的に韓国のものである証拠と解説が十数枚の大きなパネルで展示されていたのは最近の日韓の間の大きな問題になっている表れであろう。当然のことながら日本側の主張は無いので、この展示を読む限り歴史的に韓国の島である独島をなぜ日本のものだというのか!という反日感情が生まれるのは当然であろうなと感じた。

 「韓国・独立記念館」で検索すると多くのWebページで内容や解説と写真が出ているので詳しいことは省略する。館内の売店で日本語の解説書が18,000ウオンで販売されていたので購入した。

 「室内展示館」は歴史の流れに沿って展示館が7つに分かれているのは以前と変わりがないが綺麗な喫茶店や休憩場が新しく設けられているのは時代の流れを感じた。所々に日本語の説明文があるが解説書での説明文が2001当時と比べると表現が変わっていた。( )内は200年当時の表現

第1館「民族の根」・・・・・(石器時代から開港(1910年)まで民族の根)
第2館「民族の試練」・・・(近代民族運動、愛国啓蒙運動、義兵戦争)
第3館「国を守る」・・・・・ (日帝侵略)
第4館「三一運動」・・・・・(3・1独立運動)
第5館「国を取り戻すための戦い」・・・(独立軍、光復軍、義烈闘争)
第6館「新しい国づくり」・・・ (在外同胞、臨時政府)
第7館「独立運動体験場」・・(朝鮮戦争、経済開発、国力の成長と南北統一への意思)

 展示内容は全体としてかなりスマートに改装されているが第2〜4館の日本関係の展示の内容そのものはあまり変わっていない。日本による韓国への侵略が主なの展示になっていて、三一闘争における日本兵との一騎打ちの再現シーン、皇后の暗殺の再現シーン、拷問の再現シーンと、リアルで残酷な展示に息が詰まってくる。

 この展示室には以前から日本語の解説が書かれているが次の文章の内容は全く同じであった。

「ここに展示されている内容は、文献の考証と関係者の証言など、歴史的な真実に立脚して製作されました、過去の不幸な歴史の加害者を許すことはできますが、日帝の強占期の歴史を展示することは過去の苦痛と、その対象を記憶しようというのではなく、共に発展的な未来をめざそうという意志の表われなのです。」

 日本時代の展示内容は学者やこの時代の研究者でもないから全てが真実かどうかは解らない。しかし当時の時代背景からこのようなことはあったのであろうと思う。日本国内では、こうした写真や新聞記事が見られることはない。日本人は明らかに過去の事実を隠蔽し、反省しようとしていないと思われても仕方がない、しかし掲載されたら自虐史実として糾弾されるかもしれない。相互理解とは言葉では簡単だが難しいことだ。

 
寒い日だったが多くの人達が訪れていた  

おびただしい韓国国旗(太極旗) 
 

     独立記念館の正面
   
               日本語の独立記念館案内書              
 
 「過去の不幸な歴史は忘れてはいけない」これは日本人、韓国人共に共有できる。しかし韓国のほとんどの小学生や中学・高校生が訪れている独立記念館である。薄暗い、小さな細長い窓からのぞき見る拷問シーンを子供達が覗いているを見ていると加害者として日本人が行った凄惨な拷問などから潜在意識として「反日は正義」となる可能性は無いのか?。この展示方法が子供達にとって本当にふさわしい伝承手段なのだろうか、子供達が大人になった時「共に発展的な未来をめざそう」というとい気持ちになるとは思えないのだが・・・。

 前回の見学の時にも感じたことであるが日本人側は韓国側の意思とは逆に考える人が多くなるのではと心配になった。最近朴大統領が「加害者と被害者の立場は千年の歴史が流れても変わらない」と述べたが根底にはこの展示内容の延長線上にあるような気がした。その裏返しとしての日本側の反発も多くなっている。日韓両国での正義とは一体なんだろう?

   
 
 韓国が分断国家で今なお戦争状態にあり北に対しての配慮なのか第2次対戦後の北朝鮮からの侵攻による動乱に関しての展示が無かったことや第7館での日本軍が行ったと言われる中国での細菌戦や生体実験などの展示は韓国の独立歴史館の展示として考えるとそこまでやるのかと違和感も残った。

 反日、嫌韓、呆韓、などの単語が飛び交っている現在の日本である。韓国訪問でもし時間があれば、是非自身で「独立記念館」まで足をのばし韓国という国を知っていただきたい。韓国を理解するためには自身で相手を知ることだ。

 日本の植民地支配からの独立が建国のアイデンティティーになっていることがよく解るのである。

   

余談

 天安ICで降りるとすぐに白石大学校(旧天安大学)があった、広大な敷地に立派な建物で、本館の10階に日本人教授の研究室があった。日韓の政治、文化などについて2時間近く有意義な面談が出来た。またいろいろ参考になる情報をいただいた。教授は在韓25年でこの大学で日本語を教えている。

 白石大学は生徒数3千人の私立である、日本語を専攻する生徒は東日本大震災、福島原発事故以降毎年減ってきているという、3年前には120名ぐらい居たが現在は40名になったらしい。

 大きな原因の一つは放射能に対する日本への恐怖感があるようだ、この感覚は日本人に理解しにくいところだが外国からみれば距離の問題より情報が伝わっていないために起る日本居住への恐怖感のようだ。日本の水産物の輸入禁止もその流れに沿うもので情報の開示という点ではもっと日本は考えるべきことかもしれない。

 

 




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