2015年12月

 ソウルの北西約50kmにある江華島(カンファド)でトレッキングをしようと意気込んで出発したが交通渋滞で遅くなり現地到着は11時頃になってしまった。この島には多くのトレッキングコース(16コース)が整備されていて仲間のチョンさんが事前に調べてくれてその中の「14番コースを歩きます」と聞いていたのだった。

 江華大橋を渡って街の中に入って行くと郡庁の近くの駐車場に出た。とても静かな雰囲気の駐車場だがここから歩くことになるようだ、地図で確認すると近くに「龍興宮(ヨンフングン)」という建物がある。

 

江華島(カンファド)の地図

 韓国風の壁に沿ってよく整備された坂道を歩いて行くと右側に「龍興宮(ヨンフングン)」への門があり誰でも自由に入れるようなので見学して行くことにした。この建物は第25代の王になった哲宗(チョルジョン)が王位に就く直前まで住んでいた住居だ。建物は1974年に改修されたようで壁や瓦などは真新しい感じがした。幾つかの建物や庭を見て回ったが当時の面影が残るものあまりなかった。
                    
 
よく整備された道 龍興宮の建物は真新しい
壁と道がマッチして良い雰囲気 目印のリボン
 
韓国風の壁の前でポーズ

 市街地を抜けると急な山道になり登って行くがこのコースで良いのか案内役のチョンさんと確認していると・・すぐ先に目印のリボンが見えた。済州島と同じようなリボンの目印がところどころにあるのでリボンに沿って歩けば道を間違えることはない。
 左手の林の中から犬のけたたましい鳴き声が聞こえてきた。囲いの中に数匹の犬が吠えている、その奥のテントの中には多くの犬が飼われている様子だった。
韓国の犬食文化であるポシンタン(漢字で補身湯:身を補う湯)などのになる食用犬の養殖場である。最近はソウルではポシンタンの看板は見かけないが依然として密かに続いている韓国の食文化であり栄養価の高いことから当分は無くなることはないような気がする。
 
 早く行こうと急き立てられて登って行き丘の上に出ると爽やかな風が吹き抜けて気持ちが良い、今年は暖冬と言われているが今日もこの時期としては暖かすぎる感じがする。今日もカメラマンは運転してくれた金さんに頼んだ

   
丘の頂上まで登って来た

  最上部に登って周囲を見渡すと彼方に水路が見える、ここが本土とは水路で隔たれていた島であったことが解る。昔の江華島の水路は狭いが水流が速く渦潮が荒々しかったために容易には渡れなかったようで高麗時代と朝鮮時代には、戦乱時には王の避難地とされた場所である。

 歴史を遡れば13世紀前半にモンゴルの高麗侵攻により首都だった開城を放棄し遷都したのがこの江華島だった。1860年代にはフランスにより、1870年代にはアメリカにより一時占拠され、1875年(明治8年)には日本の軍艦雲揚号による挑発行為が発端となり近くの草芝鎮(チョジジン)砲台砲と交戦した。翌年には日朝修好条規が締結され、1910年の朝鮮併合に繋がって行った。

 過酷な中でも忍耐強く生き抜いて来た島民達は吹き抜けている海風から生きる活力を得ているのかもしれない。目前の山や海など静かで平和的な雰囲気に包まれた風景を眺めながらふと考えた。

 
 
   
 街と山の佇まい 落ち葉を踏みしめて
   
 コーヒータイム 高麗宮址(コリョグンジ) の門

  短い時間のトレッキングの後は高麗時代の臨時首都だった高麗宮址(コリョグンジ)を見学するため緩やかな坂の道を登って行くと格好良いカフェがあったので休憩することにした。味の良いカプチーノを飲みながらゆっくり休んだ。

 高麗時代の臨時首都だった高麗宮址(コリョグンジ)は再建された建物だが伝統的な彩色の丹青(タンチョン)に首が痛くなるほどしばし見とれた。それぞれの民族には、それぞれの文化があり丹青は長い歴史の流れの中で培ってきた韓国の文化だ。建物は一旦朝鮮王朝時代に再建されているようだからこれも高麗時代の再現ではないかもしれない。
 
 
 美しい夕日が見える展望台
 
 江華島在住の日本人で「akiko takeoka」という人が江華島旅行コーディネーターをしている。以前からFaceBookで知り合い情報交換していたので江華島のお薦め料理を伺うと「アヒルのセイロ蒸し」「うなぎ」「カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油付け)」という返事があった。

 昼食を同行した韓国人(2名)と相談すると・・まだ食べてない「アヒルのセイロ蒸し」が食べたいというので電話で食堂の位置を聞いてナビを設定して30分ぐらい走ると道路脇にあった食堂に到着した。「アヒルのセイロ蒸し」は大・中・小があり我々は3人だから「中」の48000W(4300円)のを注文した。

 セイロの中に入っていたのは野菜とアヒル肉で既に蒸し終わっていたのでテーブル上では温めるだけですぐに食べられた。葉っぱに包んでアヒル肉が微かな香辛料の香りと柔らかい食感につい食べすぎた、もう食べきれないと思っていたらエビ味付けのカルグクス(韓国式うどん)が出てきて・・これも美味だった。日本人好みなど知り尽くした「アキコガイド」さん情報に感謝した。

アヒル肉のセイロ セイロを開けると・・・
葉っぱにニンニクと一緒に包んで カルグクス(韓国式うどん)



 韓国ネットでの「akiko takeoka=竹岡章子」さんの紹介記事では・・・ 江華島は北朝鮮を目の前にしている軍事地域のために開発できないため自然が残されている。静かで春夏秋冬、非常に景色が美しく、対岸が北朝鮮で船が入れない土地柄のため、魚も豊富で渡り鳥もたくさんやってきます。ソウルから近いにも関わらず、自然が豊富だということです。

 食べ物でのお薦めではアヒルとウナギ、アヒルは燻製されたものが多いが、ここでは蒸したもの。脂が落ちて食べやすい。ウナギは養殖が盛んですが、ある程度成長すると40〜70日間、干潟に返すので自然の養分を取り込み肉質がよくなり、天然物に負けない味があると話している。


 ぶつかって近くなれるのが韓国、言いたいことは口に出して韓国では意思表示をはっきりしないと伝わりませんとも話している。ビジネス関係の経験からも日本人特有の曖昧さは通用しないことは私自身も感じたことがあったので韓国人と付き合う重要なポイントかもしれない。


 近くに住んでいるようで食堂までわざわざ来てくれた。初対面の挨拶したが慣れない異郷の地で観光案内まで出来るようになっている竹岡さんに敬意を称したい。


中央の竹岡章子さんとチョンさんと記念写真




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