2016/3

 

 日韓両国の政府は国交正常化50周年の最後の昨年末に慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的な解決」を見たと発表しました。しかし2010年から12年まで駐韓国大使だった武藤正敏氏は韓国社会において反日という前提はこれからも変わらないでしょう。教育もメディアもこれまで反日一本で通してきたので、韓国が日本を客観的に見られない以上問題は解決しないかもしれないと述べている。両国首脳が政治家として格段に成熟したことを物語る一方で、慰安婦問題が再び蒸し返される火種も残している。安倍晋三首相が表明したのは「おわび」であって「謝罪」ではない。韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が使った表現は「立場の表明」であって「約束」や「合意」ではないという意見もあるからだ。

 20年間日韓を往復しいろいろな韓国人と話をしてきたがその中で韓国の反日は、ソウルの日本大使館前と国会とテレビ・新聞の中にしかないような感じも受けている。それに比べて、心配なのはこの数年の間に日本人の嫌韓感情が高まっていることだ。すべてを韓国人の民族性・国民性に基ずくものとした議論が韓国、韓国人とかかわったことがない日本人に拡散することを心配している。相互理解の道はまだまだ遠い。



「悪韓論」

室谷克実著  (評論家・ジャーナリスト) 発売元:新潮社 定価: 778円  
2013/04/17発行 ISBN:978-4-10-610516-6

「嫌韓論」「呆韓論」と反韓本を出版している嫌韓評論家と評される著者が、韓国報道機関の正式発表や各国の報道、国際機関発表等あらゆるデータに基づいた韓国の実態を解き明かす一冊である。

排外主義と捉えかねない「悪韓論」という書籍のタイトルにした理由は、日本人に経験談を説明しても容易には信じてもらえないほどのものがあるため、世の中を啓蒙するために分かりやすく「悪韓論」となった、と解説されている。

日本は過去の戦争で多大な苦しみを半島に与えた、この謝罪と賠償をしろという、従軍慰安婦問題や朝鮮人強制連行問題などは日韓基本条約で完全に決着しているにもかかわらず、個人の被害については解決していないとする非常に情けない国、それが韓国であるという論法である。

この本を読んで「韓国人を理解するのにお勧め、読後も変わらず韓国を愛する人がいたら、読解力不足か平和ボケしている」とか「韓国という国は日本人の、あるいは世界のほとんどの国の常識では計り知れない非常識国家である」という読者もいるかもしれない。このような考え方が相互理解を妨げている。

正直なところ、人の悪口を読んでいて気持ちが良いものではない。どんな国でも良いところと悪いところはあるだろう。悪い一面だけを徹底的に糾弾することで、それしかないと偏った考えになることのほうが危険ではなかろうか。

何でもかんでも鵜呑みにせず、韓国関係に関するいろいろな書籍を読んで自分なりの意見を持つことが大事だと改めて感じた本だった。


哀しき半島国家 韓国の結末

宮家邦彦著 (キャノングローバル戦略研究所主幹)
       (06-10〜07-9 総理公邸連絡調査官) 発行所:鰍oHP研究所 定価 800円(税別)
2014-10-29発行 ISBN978-4-569-82226-6

著者は外交関係の評論者としてよくTVに出て解説している元外交官の宮家邦彦氏である「哀しき半島国家 韓国の結末」という表題に引かれて購入し読んでみた。

最近の日本人の嫌韓感情は一般の人まで広がっていることを身近に感じているが、日本人の韓国に対する好感度を調査した結果を韓国の中央日報が昨日の日本語版で報じているが東南アジアで日本が最低の14.3%だったと報じている。

嫌韓論の高まりの中で「少し冷静に考えたらどんな具体的解決策が考えられるのだろうか」という気持ちからだった。韓国の動きの背景を分析して、地理的には、韓国は海で行き止まりになる廊下のような国であり、 歴史的には中国に従うか、徹底的に戦うしかないのが実状であると述べている。

バクダットに赴任した経験からイラクは渋谷駅のハチ公スクランブル交差点のような国であり、大国は自然の要塞をもたないこの国の住民を殺し、搾取し通り過ぎたからであろうか「激情的で、狭量で、自尊心ばかり強く協調性に欠ける」人が多くなっている。イラクほどではないがコリア半島にも自然の要塞を持たない民族の地勢的悲哀を感じるという。

2500年にわたる北東ユーラシアの歴史的変遷を分析し12の地政学パターンに分類したり8通りの朝鮮半島の近未来を予測したりしている。このあたりの予測と「日本が何をすべきか」というアイデアが書かれている。


アンニョンお隣さん

木口政樹著 (韓国・白石大学校教授) 出版社 「花伝社」 定価: 1500円+税
2015/12/25発行 ISBN978-4-7634-0764-1

「アンニョン お隣さん」は著者が韓国生活27年間で体験した意外と悪くない韓国でのつぶやきであり「おしょうしな韓国ほのぼの韓流100 話」(かんよう出版)に続く著作である。

私も約20年間近く韓国中小企業の支援してきた体験からも著者がいう「意外と悪くない韓国生活」には共感出来るものがあった。

日本ではもっぱら嫌韓感情を煽るような書物やニュースが多数出版されている。韓国からも同様に反日ばかりが日本に伝わってくる。しかし一般の韓国人の殆どは日本、日本人に表面的には好意を持っているのも事実である。

つまり「アンニョン お隣さん」「アンニョン」とは、「こんにちは」の意味であり、この本は「日本と韓国は隣同士だから仲良くしようよ」という意味の著者の呼びかけが伝わってくる。

内容についてはハングルの成り立ちやデジタル性と日本人のアナログ性との対比。ビビンパは本当はビビンパプであるとか、韓医学のハリ治療、朝鮮半島の四季の描写など興味深い話が満載されている。

文字もハングルはデジタルであり、ひらがなはアナログだと言う。だから韓国人のものの云い方は判りやすいがそのダイレクトさに、著者もカチンとくることがあったという。断る時にも遠回しな言い方をして相手を傷つけまいとする日本人の心との対称的である。

この点を知っていると、ビジネスの交渉で韓国人がイエス、ノーをダイレクトに表現し少し激情型であると言われる理由が何となく理解できる筈である。

また水銀と硫黄を原料とする秘薬・霊砂(ヨンサ)につては非常に興味があった、韓国人の知人に聞くと「以前にそのな薬がある話は聞いたが・・」という程度ではっきり答えられる人はいなかった、まさに秘薬である。この秘薬についての後日談が個人的には聞きたいと思った。

以前、訪韓時に時間を作って天安市の白石大学校(旧天安大学校)の研究室まで面会に行き、木口教授から韓国についていろいろ話を聞き一緒に食事をした思い出がよみがえった。


日韓対立の真相

武藤正敏著 (元日本大使) 褐蜍出版 定価: 1250円
2013/12/9発行 ISBN978-4-908117-10-7

著者は2012年まで韓国の特命全権大使だった人で韓国でのイベントに出席して韓国語で挨拶している大使であった。私自身も離韓直前に日韓経済人会議関係の席でお会いして名刺交換もさせていただいた思い出がある。

この元大使が書いた「日韓対立の真相」を読んで感じた事を述べたい。

今年は日韓国交正常化50周年だが、竹島や慰安婦問題などで両国関係は険悪な状態が続く。「今まで通りでは日韓関係は良くならない。ルールを変えるときだ。韓国の反日はもうやめてもらわないといけない」と訴える。 そのうえで韓国側が変えるべき3つのポイントを指摘している。

1、「韓国は、国交正常化した昭和40(1965)年以降の日本が真摯に韓国の発展に協力してきたこと  を、韓国の人は知らない。

2、慰安婦問題について、韓国政府が「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の主張にこだわっている  限り、日韓関係の改善はない。挺対協の主張は日本政府の法的な責任の認定、責任者の処罰、   国家賠償他だが到底受け入れられない。

3、40年の日韓請求権協定のとき、完全かつ最終的に解決としたのに韓国政府は法的に『慰安婦問   題は未解決だ』と言い出すからこじれるのだ。

日本は今後「韓国とは距離を取りそれなりのお付き合いをする」しかないでしょうとしているが私が印象に残ったのは・・・

日韓関係の修復には日本側の嫌韓感情を和らげる努力が必要で一般国民は日本や日本人に対して悪い感情は持ってない。むしろ日本の対韓感情のの方が激しいと述べていることだった。

個人的な意見だが今の韓国側の対日外交は日本人全体を敵に回しているように感じる。だから私の訪韓についても「何で韓国なんかに行くの?」という人達が確実に増えている。

日本の嫌韓が最近非常に強まっているので一般の日本人の事はもう「かまわないでほしい」というように変わってきている。この現象は悲しいことだが悲観はしていない、両者の違いに気づき、お互いの文化を尊重しお互いが学び合えばどんな軋轢も克服できると思う。


なぜ私は韓国に勝てたか 

加藤達也著 (前産経新聞ソウル支局長) 産経新聞出版 定価: 1400円+税
2016年2月2日発行 ISBN978-4-8191-1274-1

産経新聞のソウル支局長が韓国の朴槿恵大統領に対する名誉棄損で訴えられて起訴され、無実の判決を受けた事件の内容を朴槿恵政権との500日戦争としてまとめたものである。

日頃から韓国では産経新聞は日本のマスディアとして極右であり、朝日新聞は良心的な新聞として評価されている。このことは韓国のニュースなどに接していると誰でも解ることである。まして朴大統領の反日的な言動に対して嫌韓感情を流している系列夕刊紙では少し極端な表現が多いことも事実。

名誉棄損とされたコラムの内容をあらためて読んでみたがセオウル号事件の発生した当日に朴大統領が男と会っていたというような噂を確認もせずにゴシップ記事の週刊誌のように書いたことは新聞社の支局長として韓国政府に対しての認識が少し甘すぎたのではなかろうかとまず感じた。

だからといって名誉毀損罪で起訴する韓国の司法もまったく理解できない。

大統領が気に入らない記事なら堂々と反論すればよいのだ。韓国の大統領制は、アメリカと違って大統領の地位が三権の上にあるようだからいくらでも司法への働きかけは出来るはずであるのに言論の自由をめぐる問題として起訴され、8か月間の出国禁止の憂き目に遭うという出来事だったのだ。

起訴され公判があり無罪となったドラマが終わっての印象を、炭鉱夫が有毒ガスの発生を事前に察知するカナリアをつれてゆくことに喩え、自分がカナリアの役目を負わされていたのではないかと、その端的な感想を綴る。

一連の出来事を通じて強く感じたことは、韓国と価値観を共有することは極めて困難であるということだったと述べている。この本の最後に「加藤裁判記録主な攻防」というのがあり韓国の法廷内で交わされた本人、弁護人、検察官の発言内容が載っているが韓国での裁判の中身を知るうえで興味深かった。







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