2014/2

 

昨年末から日本の書店には韓国批判に満ちた雑誌・週刊誌が多くなっている。一般の人達が読む雑誌や週刊誌でも「大新聞が報じない韓国の馬脚」と題して朴大統領の反日に対する解説やソウル近郊の反日スポットなど取り上げていたり、「中韓同盟の虚妄」と題する記事や「今週のバカ」として「朴槿恵のおばさん外交」と題して卑下した記事を載せている。この記事には韓国も憤激しているという韓国のマスコミ報道もあった。

「Newsweek日本語版」でも「韓国の傲慢、アメリカの不満」「アメリカも困惑する韓国の世界観」と題して韓国の日本批判にうんざりだ、としている記事が出ている。読売新聞では「冷え切る日韓」と題する十回にわたっての特集があった。内容は最近までの日韓の確執が詳しく説明され結論的には「対韓譲歩は何も生まない、冷静毅然が鍵」としている内容だった。このようなことは過去の日本では無かったことであり、日韓関係がどうなるのか大変心配になっている今日この頃である。



「おしょうしな韓国」

木口政樹著  (韓国・白石大学校(旧天安大学校)教授) 発売元:合同会社 かんよう出版 定価: 1500円
2013/07/15発行 ISBN: 978-4-906905-18-7

著者には天安市の白石大学校(旧天安大学校)まで面会に行き、いろいろ韓国情報について話を聞くことが出来た。韓国在住25年になるそうで奥さんは韓国人で、韓国に骨を埋めるつもりであると話してくれた気さくなまだ若い教授である。

本のタイトルの「おしょうしな」とは米沢方言で「ありがとうございます」という意味である、日本の米沢への郷土愛を込めつつ、著者が韓国で暮らし始めてから感じたことなどユーモラスに100話に纏められ掲載されている。

結婚式の祝い金の封筒、ヤクス(薬水)場でのおばさんとの会話、ポシンタン(補身湯)、タバン(茶房)での会話、床屋の経験、お風呂、ゼネラルメカドがマッカサー将軍だったなど多少の経験もあるだけに思わず「思い出し笑い」してしまった。

観光への3泊4日のツアー観光で韓国を訪れてソウルを中心とした観光地をまわり帰国した人から、よく「韓国は・・」とか「韓国人は・・」とかの話を聞くが一部を見て韓国や韓国人という全体を評価する話しは気を付けなければならないと時々感じることがある。

この本を読んでから韓国旅行に行けば、韓国の生活文化を知ることで今までよりも、韓国が身近に感じられると思う。気楽に読める内容であるから通勤時や家でも気分転換に読むのにはちょうど良い。

マスコミでは反日、嫌韓感情が渦巻いている日韓関係であるがこのような時にこそ韓国人の生活文化を知ることは日本人として意味がある。是非、一読してから韓国観光に行くようにお薦めしたい本である。


黒南風(くろはえ)の海

伊藤 潤著 (作家)  「 鰍oHP研究所」 定価: 800円
I2013/11/26発行 SBN 978-4-396-11320-9

梅雨どきのどんよりと曇った日に強く吹く南風を黒南風と呼ぶようだが豊臣秀吉の晩年の朝鮮出兵に加わった佐屋嘉兵衛が明・朝鮮軍と闘った文禄・慶長の役を舞台にした壮絶、凄惨な殺りく戦が生々しく書かれている。

加藤清正の鉄砲隊長でありながら戦いの意味に疑問をもちながら戦い、朝鮮軍に捕えられた佐屋嘉兵衛
(サヤカヘエ)がそのまま朝鮮に留まり朝鮮に帰化し、後に「沙也可(サヤカ)」と呼ばれ、さらに「金忠善(キムチュンソン)」と呼ばれた人物が主人公である。

もう一人は朝鮮人勘定方で清正軍に捕えられ、通詞として従軍した「良甫鑑」で二人の悲壮な決意を通し、無意味な戦の愚かさと、人の誇りの強さと哀しさが描かれている。

「われらは隣人、無益な殺生はやめよう」という考えは現代風に言えば「我々は隣人同士、無用な非難合戦はやめよう」というという事になる。今こそ隣人として団結すべ時が来ていることを、ひしひしと感じる内容で面白かった。

特に故司馬遼太カ氏の著「街道を行くー韓(から)の国紀行」を読んで大邸市の近くにある友鹿里(ウロクドン)という村が日本人の沙也可(サヤカ)という人物が住んだ里であると知って出掛けたことがある。懐かし思い出として残っている。

2003年にここを訪ねた時の訪問記と日本で顕彰碑が建立されたニュースをアップしてあるので参考まで・・。

武将沙也可(サヤカ)が朝鮮に帰化し住んだ友鹿里(ウロクドン)訪問記
http://yoichi1938.sakura.ne.jp/omoide/korea_life/2003/uroku/main.html

日本人武将・沙也可、朝鮮名・金忠善の顕彰碑が日本の紀州東照宮境内に建立
http://yoichi.mo-blog.jp/kaki/2010/12/post_4ca0.html

竹林はるか遠く

ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ著  訳者:都竹恵子 「株式会社ハート出版」 定価: 1500円
2013/07/19発行 ISBN978-4-89295-921-9

この本の著者が11歳の時、朝鮮半島の中国との国境近くで終戦を迎え父親は満鉄勤務で行方不明、兄とも離ればなれになり姉(16歳)と共に母親に連れられ決死の朝鮮半島での逃避行が始まる。

食料もなく、同胞が倒れ行く中、抗日パルチザンやソ連兵、朝鮮人の容赦のない暴行をかいくぐり祖国日本を目指す物語。多くの引揚者が味わった壮絶な体験記だが、11歳の少女が朝鮮で体験したことが赤裸々に綴られいる、息もつかせぬ愛と涙の物語である。読んでいて思わず涙が滲んできた場面もある。

日本軍人の暴虐なふるまい、日本人女性が朝鮮人に襲われ強姦されたり、虐殺されたり、また金一家というとても親切な朝鮮人一家も描かれている。

作者はヨーコ・カワシマ・ワトキンズという方で、アメリカ人と結婚して現在はアメリカ在住。以下は本の中の「日本語版刊行に寄せて」という部分での記述である。

この本がアメリカで出版されて20年経った2006年の秋、ボストン近辺に住む在米韓国2世たちが突如怒りを爆発させました。

本書はアメリカの中学校の教材として採用されていたのですが、その内容について「日本人を被害者にし、長年の日帝侵略が朝鮮人民に対して被害、犠牲、苦痛を与えた歴史を正確に書いていない」「強姦についても写実的に書いており、中学生が読むのにふさわしい本ではない」といった理由をつけて、本を教材からはずす運動をあらゆる手段を使ってやり始めたのです。(中略)

最後に著者は「個人や民族を傷つけるためのものではなく、この物語を通じて戦争の真っ只中に巻き込まれたときの生活、悲しみ、苦しさを世の中に伝え、平和を願うものです」

本書は「戦争の悲惨さと平和の尊さ」を訴えている、ともに苦難を乗り越える母と姉との「家族愛」と母の強い生き方が描かえている。私がこの本を読むきっかけは最近の日韓関係の悪化の中で「在米韓国人が猛抗議」「全米中学校の教材から排除運動」などの情報をネットで知ったからであった。問題となった朝鮮人に関する描写については特に問題ないと思う、米国での騒ぎが韓国での反日の刺激を受けた感情的な反日運動だとしたら残念なことだ。

この一家が味わったことは国家の他国を侵略した間違った判断があった、原因を作ったのは日本であることも考える必要もある。戦争は一番弱い者に大きな犠牲を強いるのだ。どんな理由があろうとも二度と戦争はやってはいけないのだ。


独立記念館 案内書(韓国)

独立記念館発行  価格: 18000ウオン(約1800円)  2011/3/7発行 

「独立記念館」の展示されている内容の案内書で展示館内部の解説や写真が出てい詳しいことは省略するが館内の売店で日本語の案内書が販売されているのは日本人の訪者も多いということかもしれない。

歴史の流れに沿って展示館が7つに分かれていて所々に日本語の説明文があったがこの案内書にも反映されている。

第1館「民族の根」・・・・・(石器時代から開港(1910年)まで民族の根)
第2館「民族の試練」・・・(近代民族運動、愛国啓蒙運動、義兵戦争)
第3館「国を守る」・・・・・ (日帝侵略)
第4館「三一運動」・・・・・(3・1独立運動)
第5館「国を取り戻すための戦い」・・・(独立軍、光復軍、義烈闘争)
第6館「新しい国づくり」・・・ (在外同胞、臨時政府)
第7館「独立運動体験場」・・(朝鮮戦争、経済開発、国力の成長と南北統一への意思)

第2〜4館の日本関係の展示の内容は日本による韓国への侵略がメインの展示になっていて、三一闘争における日本兵との一騎打ちの再現シーン、皇后の暗殺の再現シーン、拷問の再現シーンと、リアルで残酷な写真も載っている。展示に息が詰まってくる。

反日、嫌韓、呆韓、などの単語が飛び交っている現在の日本、韓国観光でもし時間があれば、是非自身で「独立記念館」まで足をのばし韓国という国がどのような経緯で現在に至っているのか理解が出来る。

この案内書でも日本の植民地支配からの独立が建国のアイデンティティーになっていることがよく解るのである。


呆韓論(BO KAN RON 

室谷克実著 (元時事通信ソウル特派員) 「株式会社産経新聞出版」 定価: 900円
2013/12/9発行 ISBN978-4-8191-1235-2

「呆韓論」は「ほうかんろん」と思ったが、BOKANRONと付記されている。呆(ぼ)ける、呆然(ぼうぜん)、呆気(あっけ)、呆(あき)れるだ。著者はあまりにも呆れることが多い国なので「アキカンロン」と読んでもいいと書いてあった。つまり「韓国はあきれるほどむちゃくちゃな国」と韓国側のメディアや公的機関が発表した数字を分析して、そこに見る韓国の矛盾を考える内容だった。

著者の室谷克実氏は時事通信の元ソウル特派員で既に「悪韓論」という本を出しているのでその続編のようで韓国批判を繰り返している・・

実際に韓国・韓国人に長く接しているわが身としてはこのような見方もあるのかと驚き、且つ読んでどっと疲れた。しかし一般の韓国人の考える事象とは何か違っているような気がするのだ。

確かに韓国の主要新聞(朝鮮日報、中央日報、東亜日報)の社説やコラムの日本語ページを読んでいると「ジャパン・ディスカウント」的な内容が多い、日本在住の韓国特派員はどうしてこのような日本の立場を無視した一方的な内容を発信して日本人の韓国嫌いを増やすのかその意図が解らない時がある。

いろいろな考え方があるのは日本も韓国も同じだ、ひとつひとつの発言や資料をつなぎ合わせる時に歴史認識についての考え方の差がある。つまり日韓併合条約と終戦後の日韓基本条約の背景にある日本人の論理と韓国人の論理の差に繋がっているから解消はなかなか困難であると感じた内容だ。







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