2013/7

 

 最近の日韓関係は悪化の一途であるようで心配である。。従来から竹島(独島)、従軍慰安婦、靖国神社、歴史教科書、の反日四点セットと呼ばれている問題が両国の障害になったきたのだ。日韓の指導者が替わり特に知日家の朴新大統領になって少し変わるかと期待したのだが「加害者と被害者の立場は千年の歴史が流れても変わらない」と強調して以来、期待は裏切られかえって韓国側の対日批判が激しくなっているようだ。
 
 先日開催された東アジアサッカー大会の日韓戦で「歴史を忘れた民族に未来は無い」とハングルで書かれた長さ40mの大横断幕が掲げられた。これに対して日本側が政治的な主張を禁じた国際サッカー連盟(FIFA)の規定に抵触する可能性があると大きく取り上げて、また葛藤が大きくなりそうである。この件に関してだけは韓国側に「スポーツマンシップを忘れた民族に将来は無い」という言葉を返したいが相互理解はまだまだ先の話しかもしれない。



韓国 葛藤の先進国

内山清行著  (日本経済新聞ソウル支局長) 発売元:日本経済新聞出版社 定価: 850円
2013/03/15発行 ISBN978-4-532-26189-4

昨年、1人当たりの国民所得が2万3680ドルになり、3万ドル時代を望めるようになっている韓国である。(日本は4万6735ドル)このような客観的な統計数値でも韓国はすでに先進国になっていると思う、だからG20のメンバーでもあるのだが・・・この質問を韓国人に聞くと皆さんなぜかまだまだという返事が多い。

先進国としての品格が国民の生活と文化の中でまだ発展途上国的な中国のような行動が残っていたりするのが韓国である。韓国では「葛藤」という言葉が日本に比べて格段に多く使われ「本当は解りあいたいのに、上手くいかない」という説明がされているがなるほどと納得できる。

本書は政治・経済・社会など多くの分野で二極化が進み葛藤と分裂が深まっていて、世代間格差、富裕層とそうでない者の格差、財閥と中小企業の格差をピックアップし、葛藤の深層に迫ろうとしている。著者は日経新聞ソウル支局長であったので豊富な数字やデータを使って葛藤の中身を解説している。

韓日関係と南北関係についての「葛藤の種」についても言及しているが「出口が見えない長いトンネルの手前」に立っている韓国の姿を感じた著作であった。

本書は五章構成になっている。

第一章 天国と地獄  救われない超競争社会
第二章 脆弱と野望  輸出立国の明暗
第三章 過去と未来  日韓関係波高し
第四章 本音と建前  北朝鮮問題の行方
第五章 権力と蹉跌  大統領の宿命

各章の題名を見てもわかるように、韓国の抱える課題は広く、深いことが多い。少子高齢化も日本より早く進展しそうだし、若い人たちには就職先がない、そして大統領は5年の任期だけど終盤には求心力がなくなってしまう韓国。

現朴大統領政府には北朝鮮問題と経済民主化の叫びが大きくなってきている。同じ民族であるけれども、相入れるところのない北朝鮮の厄介な存在があり、また隣国である日本との関わりも竹島問題、従軍慰安婦問題など両国の葛藤の内容が理解できる。

「社会葛藤指数」というのがあるようだ。

社会葛藤指数の算出には所得不均衡の程度、民主主義の成熟度、政府政策の効率性が指標に使われた。所得不均衡が高いほど、また民主主義の成熟度と政府政策の効果性が低いほど、葛藤指数は高まる。

韓国は所得不均衡はOECD平均水準だが、民主主義の成熟度は27位と最下位であり、政府政策の効果性も23位と平均を下回った。 韓国が社会葛藤のために支払う費用は国内総生産(GDP)の27%であると言うが何だか難しい数字である。

社会葛藤指数の最も高いのがトルコ(1.2)で、次がポーランド(0.76)、スロバキア(0.72)、そして4番目が韓国(0.71)だそうだ。その次はイタリアだが韓国とは差が大きい(0.56)。他の国々はアメリカ0.44、日本0.42、フランス0.38など殆どが0.55〜0.35の間です。0.3より低いのはスイスやデンマークなど福祉メインの国である。


歪みの国・韓国

金 慶珠著 (東海大学教養学部国際学科准教授)  「祥伝社」 定価: 780円
I2013/6/3発行 SBN 978-4-396-11320-9

金 慶珠(キム・キョンジュ)という女性韓国人の著者を知ったのは2009年の朝鮮日報の時事評論に「名分のない日本の指紋採取」という小論文が掲載されいたの読んでからだった。

この評論の中身は日本政府が外国人の入出国時に指紋チェックを行うという方針に対して日本を出入りする年間700万人の3分の1を占める韓国人は潜在的テロリストと見做すつもりなのかという日本政府に対する非難の内容だったと思う。韓国メディアが時々発信するいつもの反日記事だなとその時は思ったのだった。

その後はテレビの討論番組に出演している姿をよく拝見し日本に住んでいる韓国人で日韓問題では韓国側に立って必死に解説している姿を眺めることが出来た。討論では切れ味の良い主張しているのが目立っていた。今回初めての本という紹介があったのが意外である。

日本と韓国、良き隣人国でありたいがそうなっているとは思えないのが現実である。最新の世論調査では両国がお互いに「親しみを感じない国」が約60%になっているのだ、日本側の意識の変化が大きくなっている数字なので困ったことだと思っている。

著者は韓国の不自然でいびつな急成長の弊害を「歪み」というキーワードで分析して第一章:情報のゆがみ、第二章:成長のゆがみ、第三賞:対立のゆがみ、に分けて韓国の過去から現在の過程の中で起こっている事象を辛口の韓国分析して日本人が知らない韓国があることを解り易く解説してくれている。

韓国の反日的な国民感情、文化交流による相互理解の深化、など相反する現象は事実であるから二者択一でなく現実は矛盾に満ちたものであることを理解すべきであると述べている。情報のゆがみから発信はもう少し慎重になって欲しいと解説しているが韓国メディアに蔓延っている韓国政治のナショナリズムを煽る手法についてはいったいどうすれば良いのか、韓国の急成長の「歪み」を理解することは出来るが日本に対する韓国の政治家、メディアの「歪み」を理解するのはなかなか難しいと感じた。


李藝(イ・イェ)

金住則行(なかずみのりゆき)著 (弁護士 法律事務所長)「 渇ヘ出書房」 定価: 1600円
2011/12/30発行 ISBN978-4-309-02080-8

72歳になった年老いた李藝(イ・イェ :72歳)が息子のチョンシルに自身の人生の旅の内容について聞かせる語り口で「チョンシルよ・・」と書かれている。

朝鮮通信使とは江戸時代以降のものを指すことが多いのだが実は室町時代から信(よしみ)を通わす使者として派遣されて
いたのだ。

それにしても当時の倭寇という海賊行為がどれほど朝鮮の人を苦しめていたのか、略奪され、奴隷として異国に売られている理不尽に対し国や民族の誇りをかけて外交官として戦った生涯にジーンと感動をおぼえた。

「李芸」はこれらの被虜朝鮮人の救出に情熱を注ぎ、日本との外交に活躍する。対馬をその外交の橋渡し地として、実に40余回にわたり往来し、日本との修好にも意をくだき、日本国王(将軍)に対する「朝鮮通信使」の正使を6回も務めている。

李藝は8歳のとき母親を倭寇にさらわれたという体験から母親を何んとか連れ戻したいという執念が武芸に秀でた外交官に成長させ倭寇による被虜朝鮮人の救出で、実に667人の朝鮮人を祖国に連れ帰っている。

余談だが・・最近の日韓関係には暗澹たる思いを感じている。しかし信(よしみ)を通わす人と人との交流に希望を見出せるような気もする。日韓両国を愛する人たちで日韓の関係が明るくなればと期待する。

最近、映画化されて公開されているので鑑賞したいと思う。
http://rigei.pro/story.html


悪韓論

室谷 克実著  (元時事通信社 ソウル特派員) 「新潮社」 価格 : 720円
2013/4/17発行 ISBN978-4-10-610516-6

悪韓論とはなんともすごい表題の本だ、悪しき韓国という訳だからには相当の論理的な理由がある筈だと思って読んでみた。

朝鮮日報、東亜日報、中央日報、の韓国三大新聞から地方紙、そしてテレビ局の報道など元ソウル特派員であった著者が、韓国の報道機関自身が報じたことをソースとして、韓国及び韓国人について述べている。

韓国語に堪能でジャーナリストとして長期にわたって韓国滞在経験もある著者の分析で「客観的」な韓国批判という側面はあるが思想信条によって解釈の仕方は分かれるのかもしれない。

差別意識、異様なまでの学歴崇拝、熟練工も育たない歪んだ技術軽視などの記述は一側面であり必ずしも真の韓国全体の姿ではない。また「外華内貧」と表現するような実態は長く韓国に馴染んで来た者として感じるがそれは全てではない。データを駆使したような体裁はしているが、単なる韓国悪口本のようでもある。

「外華内貧」は大げさだがその底流にある思考、行動、風習に迫っていることは理解できる。事実は事実として知っておく必要があると感じた。


中国に立ち向かう日本、つき従う韓国 

鈴置高史著 (日本経済新聞社 編集委員) 「日経BPマーケティング」 定価: 1400円
2013/02/2発行 ISBN978-4-8222-7414-6

最近の日韓関係は最悪になりつつある、韓国はなぜ、中国と一緒になって日本を叩くのか?米国から離れて中国ににじり寄るのか?北朝鮮に対する対応など米国の忠実な同盟国のはずの韓国が今、中国に取り込まれつつあり、反日気運はとどまるどころか増幅されるだろうという刺激的な内容である。

米国の衰退、中国の存在感が増して来ている、東アジアの勢力図が変化している中で日本は今後、外交的にどう振る舞うべきか?日中韓と米国の国益をかけたパワーゲームがこれからどうなるのか、回答はないがニュースなどを見ているだけではわからない情報が満載で面白い内容であった。

エピローグの最後に「高まる中国からの圧迫と韓国からの嘲りによって、日本人も自身の衰えと、国際社会の中で自分が置かれた位置に次第に気が付いてきた。その新たな認識により、日本は生き残りとかけて国のかたちを大きく変えて行くだろう。という記述が今後の日本の行く末を考えるポイントであろうと印象に残った。

目次

プロローグ 中国の空母が済州島に寄港する日
第1章 「中国」ににじり寄る「韓国」の本音
第2章 「日本」を見下す「韓国」の誤算
第3章 「米国」と離れる「韓国」の勝算
第4章 『妖怪大陸』を見つめる日本の眼
エピローグ 結局は「中国とどう向き合うか」だ







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