2009/10

 

半世紀にわたり続いた自民党一党支配体制に終止符を打ち、民主党が政権を獲得した。この政権で日本はこれからどんな変化をもたらすのだろうか、日韓関係も変革があるのか期待があるだけに裏切られるとその反動も起こる。最近読んだ韓国に関係する書物を紹介します。



大韓民国の物語

李榮薫(イ ヨン フン) 著   (大学教授)   「株式会社 文藝春秋」¥1857
2009年月3月発行 ISBN978-4-370310-7  

この本の著者はニューライトの論客として著名な韓国の歴史家であり、ソウル大学経済学部教授でもある。

この本を読んでまずびっくりしたのは従来の韓国人が書いた歴史関係の記述と様変わりの 内容を含んでいたことである。このような内容の書籍が現代の韓国社会で発行されベストセラーになったことに驚かざるを得ない。

この人の主張の中で韓国人は五千年前から「一つの民族であり一つの共同体だった」韓国の教科書では「日本は世界史において比類ないほど徹底的で悪辣な方法でわが民族を抑圧し搾取した」などは事実に反していると切り捨てている。

日本が朝鮮を併合したのは正に日本のためであるかもしれないが「植民地時代に韓国は近代化し発展した」と説いているのは日本支配の美化でなく歴史を直視しているからであろう。

韓国は自分の力で日本支配から解放されたのではない、韓国の若者は苦々しく思うかもしれないが、この点を冷静に正面から見つめ直さなければならないとも説いている。全てを一つの要因で説明しようとする民族絶対主義から抜け出さなければ韓国は先進国になれないという。

韓国の品格

重村智計著 (早稲田大学国際教養学部教授) 「株式会社 三笠書房」 ¥1500
2008年5月発行 ISBN978-4-8379-2272-8

「品格」という単語を使った理由として著者は 「文字どおり、韓国が明確なパラダイムの転換を迎え、品格を取り戻せるようになったと見るからだ。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府は、北朝鮮にへつらったと言ってもいいほど、無条件に北朝鮮を支持した。同胞の人権問題に目を向けない態度は、民族を政略的に利用したにすぎず、品格があったとは言えない」

また、21世紀の民主主義とは、言論の自由が支えているというのが常識だ。過去、両政府は言論を弾圧し、報道の自由を制限しようとした点でも、国家の品格を守ることができなかった」と韓国でのインタビューで述べている

著者は朝鮮半島情勢に関して研究をしておられる専門家であり韓国。北朝鮮のエキスパートとしてTVや新聞、雑誌などでその鋭い分析力は高く評価されている。

特に以前に著者が書いた「韓国ほど大切な隣国はない」(東洋経済新報社発行)という本を読んだことがあるが内容については同感であり印象に残っている。

日本にとって最も大切な隣国である韓国はこれからどうなるのか? 北朝鮮政策はどう変わるのか? 日韓関係、米韓関係はどうなるのか?今、日本人が知っておかなければならない「韓国の変貌」について述べている。

日韓の歴史対立の根本原因は植民地時代の歴史を日本では「日本史の一部」として認めないことだ。韓国では日本史の一部を韓国史と教えざるをえない。被支配者として視点から歴史を見る。被害者の歴史である。近代史の一ページ、一ページに「日帝」の文字が目に焼きつく。日本が冷静に「日本史の一部」として十分に教えないと日韓の対立はなくならない」という一文がやけにずっしりと心に残った。

先日、読んだ李榮薫(イ ヨン フン)氏の「大韓民国の物語:韓国の歴史教科書を書き変えよ」では日本が朝鮮を併合したのは正に日本のためであるかもしれないが「植民地時代に韓国は近代化し発展した」と歴史を直視した説を述べている学者も出てきている。

日韓両国のこれからを考えるとやはり歴史についての教養と知識を共有できないと歴史問題は解決しない、過去を学ぶのは未来のためである。

韓国「県民(道)性」の旅

銀淑(チョン・ウンスク)著 (作家) 「東洋経済新報社」 ¥1800
2009年3月発行  ISBN978-4-492-04332-5

著者は全羅道・慶尚道・忠清道・江原道・済州道を旅をしながら出会った人々や逸話などを通して感じた韓国人の心をこの本で伝えている。

同じ民族でも歴史や地理的な違いによるその地域特有の風土が生まれる。韓国でも同じように道民性(日本の県にあたるのは道)があります、自身としては特に半島西南部の全羅道という地域に以前から興味があった。

10数年前に訪韓した時に「彼は木浦(モッポ)出身だから・・」とある会社の社長の否定的な話を聞いたことがあった。その時はあまり気にはしなかったが、この地域は昔から権力から差別を受けた地域であるという事は知っていた。最近はそのようなことは無くなっていると思うが反体制の土地柄はどのような歴史的背景から生まれそれが云い伝わったのかよく理解出来た。

全羅道は古代の日本との交流があった百済の地である、その為かこの地には「違うけど懐かしい・・・」という昔の日本の匂いのようなものを感じる地域が多い。機会があれば再度訪れたい地方である。その他本音のプサン?建前のソウル?大邸はプライドが高い?中清道はコメデアンの宝庫?済州島の四多など韓国人気質を語っている。

この本を読むと次の韓国観光をする時はソウルや釜山だけでなくもっと地方に出掛けたくなるはずである。


民話で知る韓国

鄭 玄実(チョン ヒョンシル)著  (紀行作家) 「日本放送出版協会」 ¥740
2006年6月4日発行   ISBN4-14-088177-1

日本の各地にある民話はその地方訛りで語る事で登場する人々の心情が伝わるようにハングルで話している民話のリズムを、日本語で伝えるのは難しいが日本も韓国も民話の世界は共通するものがある。また最近放映される韓国ドラマや映画の物語の背景には「民話」の世界を感じる内容が多い。

古くから伝えられてきた民話には、その土地に住む人々の生活や習慣が脈々と息づいている。暮らしのなかで人々や動物や道具などに映し出された韓国人のゆたかさと温かさをしみじみと感じることが出来た内容だった。

収載されている民話28編の最終章に出てくる「チュニャンジョン(春香伝)」の中で語られる「サランガ(愛の歌)」が印象に残った。

君とは前世からのちぎりだから、この世でも会えたのだ。
死んだあともまた会おう。

君は死んだら花になれ

僕は死んだらちょうになり

風にゆらめく君のつぼみを

翼をひろげてそっとつつむ

韓国では誰でも知っている物語の韓国古典の名作『春香伝』のチュニャンとモンニョンの恋愛物語だ。

李朝鮮王朝時代の全羅道南原という場所でキーセン(妓生)の娘 成春香(ソン・チュニャン)と郡守の息子李夢龍(イ・モンニョン)は熱烈に愛し合っていましたが、モンニョンは父の栄転と科挙試験を受ける為にソウルへ。

後任の郡守が好色で、美人と名高いチュニャンにそばに仕えるように命じます。彼女はモンニョンに操を立てて命令を断ったため、牢屋に入れられてしまいました。

ソウルで科挙試験に合格したモンニョンは、隠密の使命を帯びて懐かしい南原に向かいます。そして郡守の悪を暴いてチュニャンを救い出し、ふたりは身分の差を乗り越え幸せに暮らしたという話である。


韓国堕落の2000年史

崔 基鎬(チェ・ケイホ)著 (大學教授)  「祥伝社」¥600
2006年6月発行 ISBN978-4-396-31407-1

「韓国・堕落の2000年史」とはおだやかな表現でないが内容は李氏朝鮮時代がいかに権力闘争に明け暮れ庶民の生活を省みなかったか、国益より党派益優先し日本に大差をつけられた理由が記されている。韓国民が読んだら気持ちが良くない内容となっているがこのことは最近放映されて韓国の歴史ドラマを見てもある程度納得できる。

韓国の最近の労働組合闘争、政治家達の政争などやマスコミが報じる日本関係の表現などの背景や行動がここに書かれている内容と時代は違うが重なるものを感じた。

日本より高い文化を持っていた高麗時代からどうして日本に差をつけられたのかは三国時代の新羅が中国・唐の属国になったときから始まった。朝鮮王朝時代の報復合戦を繰り返す党派争いに明け暮れ日本はつねに「倭奴」で侮っていたというのがその理由の一つであった。韓国歴史を再度学んだ書籍であった。

日本に対する見方の中で特に興味があったのは次の一文である。「今日の日本がアメリカ文化を模倣し、アメリカに国家の安全と未来を全てまかしているのをみると、李氏朝鮮の中国に対する事大主義を想起させる。」中国に憧れ服従したことが、李朝時代を通じて漢民族を堕落させたことを知るべきである。

李氏朝鮮は中国への卑屈な服従関係と、不正腐敗を覆い隠す名分として。慕華思想(中国の文物を崇拝する思想)を用いた。誇りを失った李氏朝鮮の末路は亡国しかなかった。今日の日本では平和主義が李氏朝鮮の慕華思想に相当する。この歴史から学ぶべきは韓民族だけでく今一の日本民族も同じではないかと忠告している。







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