2007/1


  昨年の8月の小泉首相の「靖国神社参拝」で靖国神社に関連したものを読んで見ましたが首相の参拝が 日本の国益に叶っているのかということも含めて日本が引き起こした戦争について改めて勉強させてもらいました。 靖国神社問題では首相の参拝には読後も反対する気持ちには変わりありませんでした。


靖国問題の精神分析

岸田 秀・三浦雅士 著 (大学教授、精神分析者・文芸評論家) 「叶V書館」¥1500
2005年9月10日発行  ISBN4−403−23103−9

「靖国参拝は是か非か、日中問題の深層、中国・大東亜共栄圏の野望、靖国問題の国際関係論」などについて靖国参拝を肯定する岸田氏と反対の立場の三浦氏の対談集である。 小泉元首相の言い分である「参拝を条件に首脳会談を行わないというのはおかしく、 違いを乗り越えて未来志向で対応すべきだ」 「A級戦犯」の合祀については「特定の人に 参拝しているのではなく、圧倒的多数の戦没者全体のための参拝している」との説明については日本国民の一人として賛同出来ます。しかし韓国人(中国人)側にたって考えると正直いって複雑な気持ちになるのです。

この対談の最後に岸田氏が話した言葉が印象に残っています。 「悪いと思ったら、潔く心底から全面的に謝るべきであって、悪いことしたばかりではない、いいこともしたとか、正しかった点もなかったわけではないとか・・・クドクドといろいろくだらない言い訳を述べて自分の罪を軽くしようとするのは見苦しい・・・」靖国問題の深層心理に関して理解が深まった本でした。


戦争を知らない人のための靖国問題

上坂 冬子 著  (ノンフィクション作家)     「兜カ芸春秋」¥720
2006年3月20日発行   ISBN4−16−660498−8

著者は以前から戦後史に関する靖国問題についても従来からの主張を述べています。
先の戦争の責任については犯罪者は裁判を受けて処刑され決着済みであり、平和条約発効の翌年に戦死者、戦傷病者、戦犯刑死者をすべて国家の為に命を捧げた人として差別は一切つけずに決議して靖国神社に奉ってある。日本が日本固有の神社において日本独自のまつりごとによって支えてきた問題に対して近年になって執拗に異議を隣国から受けることに対する反論を政府として発信すべきと述べています。
首相の靖国神社参拝に関して「中国・韓国の意向を無視して参拝することで反発した中国・韓国に対して日本人がまた反発して偏狭なナショナリズムが生まれる、非常に危険である」という話しもありますが「内政干渉」として無視して今後とも参拝を続けて行けるのか非常に難しい選択です。
戦争で亡くなった人に対する顕彰施設は是非必要で「国立追悼施設」なるものは今後どうすべきかも含めて議論が埋没しないようにさせたい。いずれにしても首相の靖国神社参拝で賛否定が二分してる「不幸な日本と日本人」を感じました。


すっきりわかる「靖国神社」問題

山中 恒 著  (インフクション作家)      「鰹ャ学館」¥1400
2003年8月1日発行    ISBN4−09−387456−5

靖国神社への首相の参拝についての日本国民の民意は賛否が拮抗しているのですが、なぜ反対なのかを靖国神社の歴史的使命や国家神道、例大祭、A級戦犯の合祀、中国・韓国との関係など歴史的な事実をふまえ解説しています。
しかし靖国神社問題の基本的解説書としているこの本の著者の基本的考え方は端的に表現すれば・・最後に述べている「国家が国民に戦争をやらせるために必要なのは愛国心です。はっきりいって国家が愛国心を必要とするのは戦争だけです。

「小泉首相は、国民に靖国神社公式参拝を強引に認めさせようと決意している。平和のために公式参拝をするといっていますが、日本を戦争の出来る国にしたい、戦前の「惟神(ゆいしん)の道」を復活させようといている。ということに関してはすこし考えすぎで左翼側の意見としては理解は出来るが賛同は出来ません。
しかし賛否両方の意見は是非知って置くべきと感じました。


なぜ、日本人は韓国人が嫌いなのか。

岡崎 冬彦 著  (外交評論家)      「ワック株式会社」¥933
2006年11月22日     ISBN4−89831−556−9

おばさん達の「韓流ブーム」も最近静かになってきてます。静かな状況の中で依然として残っているのは日本人の嫌韓感情なのでしょうか、本屋の棚には反韓国、嫌韓本が多いし、2ちゃんねるなどの掲示板は嫌韓の書き込みばかりです。

なぜだろうか、この疑問を解く鍵はこの著書にもありました。題名から受ける感じは「何か嫌いになる原因」が書いてあるかというと全く違って近代の日韓の葛藤、反日、嫌韓感情についての歴史的分析であり韓国と韓国人のことが良く理解できる内容です。

多くの日本人観光客が京福宮は見学しても、そこがかつて日本公使館が企画、指揮し公然と王宮に乱入し朝鮮王朝の王妃を惨殺した「閔妃殺害事件」の舞台であることは全く知らない人がほとんどです。つまり日韓の近代史がすっぽり抜け落ちた日本人が多いのに愕然とします。

明治維新後の近代化が先行出来た僅か30年間の差が先進国、後進国という錯覚を生み朝鮮人に対する差別や蔑視感になってしまったわけです。著者は日韓関係を今後良くして行こうとという問題意識をもって韓国人に訴えたいとすれば韓国側に対するより日本人側にいうべきことが方が遥かに多いと述べています。
相互理解を深め相互の偏見を取り除くためにはまだ多くの努力と時間が必要であることを改めて感じました。


幻の三中井百貨店(朝鮮を席巻した近江商人・百貨店主の興亡)

林 廣茂 著   (大学教授・マーケティング・コンサルティング) 「株モ聲社」¥1400
2004年2月25日発行  ISBN4−89188−314−6


この三中井という百貨店がかっての京城(現在のソウル)にあったという話は聞いた事も無いし、私の知っている韓国人に聞いてもすべて知らないという、「幻の百貨店」の興亡が書かれています。
戦前に朝鮮半島から大陸にかけて三中井(みなかい)百貨店という三越にも勝った一大百貨店は当時のピーク時には従業員4000名、年間売上高は1億円(現在価値で5千億円)であったということです。

この三中井という幻の百貨店の興亡を通して「なぜ消滅したのか」を作者の専門であるマーケッテングの手法でそのナゾを解いています。敗戦により何もかも失ったのはこの百貨店だけではなく、朝鮮に進出していた全ての事業が同じ状況であった筈です。再建が出来なかった理由として日本国内に営業の拠点がなかったことや、また人材の養成を怠った同属経営の弱点が指摘されます。これにTOPの再建しようとする意志と能力がなかったようです。

この本を読むと日韓併合により、一獲千金を夢見る日本人の朝鮮への商業活動の経緯が理解できます。日本帝国主義の手先でもある日本の商人である三中井や三越が朝鮮人を搾取したという主張があります。一方商業の進出により経営の移転を通じて朝鮮に近代的小売業を育てたという意見もあります。
韓国では日本の植民地化で朝鮮自体での近代化が遅れ、朝鮮での商業活動は全て日本の為であるから
「当時朝鮮で生活した最大75万人の日本人すべてが侵略・搾取者であった」という問いかけにどう答えたらいのでしょうか。

ある朝鮮総督府警務官僚の回想

坪井 幸生 (・荒木 信子) 著  (元福岡県副知事)      「椛錘v社」¥1800
2004年12月1日発行   ISBN4−7942−1356−5

著者が自分史として終戦までの足跡を子孫に伝えたいと思って書いたものです。日本の朝鮮統治時代の総督府の要職にあった人の歴史の証人とての記録です。

当時の総督府の警察がどんな任務を果していたのかロシアの脅威がどのような状況だったのかこれに対抗する為の日本側の努力や苦心が書かれています。また戦後直後の混乱の中でも職務を全うしたことや多くの朝鮮人との友情が戦後まで続いていることなど大変興味深い内容です。

武力で朝鮮を併合し、日本人が朝鮮人に対して残虐な仕打ちと搾取のかぎりをした、総督府はどのような圧政を朝鮮人に課したかという「全ては日本人が悪い」という前提で語られることが多い中でここで語られる内容からはそうのようなことがあまりにも現実離れした虚構であったのではないかと感じさせてくれた一冊です。しかしだからといって朝鮮併合を正当化することにはならないと思います。

朝日VS産経 ソウル発 どうなる どうする 朝鮮半島

黒田勝弘 (産経新聞ソウル支局長)  市川速水  (朝日新聞前ソウル支局長) 著
「朝日新聞社」 ¥700   2006年12月30日発行 ISBN4−02−273120−6

韓国のマスコミでは日本の良心的新聞は朝日新聞、極右新聞は産経新聞であるという記事を
良く見かけます。

この両新聞のソウル支局長の対談集を読みました。内容は日韓関係に関してですが、朝 日新聞のように過去に対する歴史的贖罪意識から被害者の立場に立って記事にするのか、産経新聞のよう植民地化は正当化出来ないにしても日本の立場を主張する記事にするのかという立場の違いについてそれぞれの主張を述べていて面白い内容の対談集でした。

長い韓国生活や年の功?も加わり産経新聞の黒田支社長の論理に共鳴する内容が多いですが朝日新聞の市川記者の主張もそれなりに評価できました。

日韓の間には「靖国神社」「竹島領有権問題」「歴史教科書」「従軍慰安婦」の問題があり、時々噴出しては日本人の中に嫌韓感情が増殖しているように感じます。

極右と言われている産経新聞が被害者の立場での記事より、朝日新聞が日本の立場を記事にしてくれたほうが相互理解が深まると思います。





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