2005/10


  秋の夜長に読んだ書籍を紹介します。高橋哲哉著の「靖国問題」を読み終わったら 小泉首相の靖国神社参拝がありいろいろ考えさせられました。  


靖国問題

高橋哲哉 著(東京大学教授)  [樺}摩書房] ¥720
2005年4月10日発行   ISBN4−480−06232−7


首相の靖国神社の参拝は戦後60年になっても問題になり続けています。感情の問題、歴史認識の問題、宗教や文化の問題、韓国や中国からの抗議を避ける意味から無宗教の国立追悼施設の問題などを取り上げて哲学者らしい考えを述べています。
言わんとすることは政権分離の徹底と国家の機関として靖国神社を結び付けない、つまり首相や天皇の参拝は止めるべきであるとしています。「第二の靖国」の出現についても「不戦の誓い」を担保する脱軍事化に向けた普段の努力が必要である。その上で個人の信教の自由は政経分離のもとでしか保障されないとしています。

私がこの本を読んで感じたのは首相が参拝するとこがかっての国家神道につながる危険があるかどうかを見極める必要がある反面、「自衛隊を軍隊とする憲法改正」は戦争をする国家になるという政党があるがこの考えたと同じに首相が参拝するとこがかっての軍国主義につながるから反対するという考え方には同調できません。
しかし中国、韓国の反発を無視して首相が参拝を続けることが国益とは思えませんし「国家神道」につながる可能性があることをあえて行う必要はないと思うのです、これは個人の信条とは別に考えて欲しいと思います。


新しい歴史教科書
藤岡信勝ほか11名     [兜蓉社]¥1143
平成17年8月10日発行     ISBN4−594−05009−3


私の住む大田原市の教育委員会がこの「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を選定し中・韓 の反発を招いていましたので購入しました。

韓国から従軍慰安婦の記述がない、 竹島を「韓国が不法占拠している竹島」としているなどの指摘もありますが全般的に日本の歴史の光の面を強調しながら、影の部分をおざなりにしており、その落差が他社の教科書に比べて際だっていると考えるから反発、憂慮されているといるのではないかと思いました。この教科書が「戦争をする国」の国民づくりをめざすとか「国防の義務」を子どもに押し付ける教科書である内容であるとはとても思えないのです。

この教科書が採択率0.4%終わったことが「良心的市民運動の成果」だとも思わないし、韓国マスコミが「日本の一部の軍国主義勢力と彼らと結託した一部の妄動的政治家らが日本を戦争へ導いたように、歪曲された教科書で歪曲された歴史を学ぶ日本の未来世代が日本をどこへ導くのか憂慮せざるをえない。」という反応も少し的外れに感じます。

市内の大多数の市民は歴史認識の上ではずっと冷静であり悪く表現すれば「無関心」である、事実わが町の一般市民や中学生を持つ親もあまり関心がないでで拍子抜けの感があります。
日本の多くの日本各地の教育委員会は「外交問題などの騷動に巻き込まれたくなかったから」というのが採択率0.4%につながったというのではないかと思います。


韓国は不思議な隣人
黒田勝弘 著 (産経新聞ソウル支店長兼論説委員) [兜蓉社] ¥1500
2005年7月30日発行    ISBN4ー594−04999−0


「韓流」と「反日」の間で揺れ動く韓国の本音と建前という内容で在韓25年の著者が最近の韓国政府やマスコミなどの動きそれを支える世論の動きを解説しています。
反日三点セットというのが面白い「竹島」「歴史認識」「教科書」であるという、この背景についても述べられています。
特に最近の親北朝鮮の動きと反米的な動きの韓国政府やマスコミ、支援団体の考え方が解説されていて韓国の中枢に近いところでの取材による説得力につい引き込まれそうになってしまいます。。
ヨン様ブームの中で日韓関係がいつまでもギクシャクしているのは何故なのかこの本を読むと良くわかります。


韓国・愛と思想の旅
小倉 紀蔵 著 (東海大学外国語教育センター助教授) [椛蜿C館書店] ¥1800
2004年12月20日発行   ISBN4ー469−21291−1

日本と韓国は何百年という長い交流の歴史があった、たった36年間ではあるが日本時代に朝鮮人が受けた悲しみや怒り、悲痛、犠牲、絶望、恨、決意などが現在でも生きています。
著者が1980年代後半から韓国への旅にでた、愛も憎しみも疾風怒涛のように激しさで迫ってきたのものから掴んだ「韓くに思想」とは何であったのでしょう?

根の深き木は 風に動かず 花かぐわしく実たわわになり
源の深き水は ひでりに乾かず 川をなし海にいたるなり

これは朝鮮王朝の正当性を歌った長編歌「龍飛御天歌」の一部です。朝鮮王朝のルーツの本質を歌ったものであるということです。
学校では勉強が出来ることが第一で「勉強」が本質であるというのが本質主義、韓国はこの本質主義に支えられています。
この本質に向かってひたむきに生きる姿が韓国ドラマの基本的ドラマツルギーです。これに日本人
は魅力を感じるようです。
それはともかく金芝河氏やその他多くの韓国人の思想に触れて根源的な「韓国思想」とはなにかを私にも問いかけてきた本です。

 

僕の見た「大日本帝国」
西牟田 靖 著 (ライター )  [鰹報センター出版局] ¥1600
2005年2月25日発行    ISBN4−7958−4302−3

サハリン(樺太)の半分、台湾、韓国、北朝鮮、ミクロネシア(旧南洋群島)中国東北部(旧満州)は明治の半ばから日本が敗戦前後までの時代に「大日本帝国」と称する日本の統治下に置かれていた地域である。戦争を知らない、学校でも教わらなかった30歳代の青年がその地域をオートバイで駆け巡った旅行記です。

かつて日本が占領した土地に日本人が集落を作ると必ず神社を作りました。その背景は国家神道の一層の教化を図るというものでした。未だ残っている各地の鳥居を眺めて著者は何を考えたのか、戦争を知らない若者が4年余りを費やした旅でかっての「大日本帝国」の思いを各地の人々との多様な対応から 「侵略」という一言でくくることが出来ない現実があったとのことです。
過去に何時までも拘泥する必要はないが過去を知る必要はあります。「靖国問題」 「竹島問題」「歴史教科書問題」などは良くも悪くの現在につながる過去であるから理解を深めることは必要でしょう。
それにしても若者のパワーは素晴らしいと感じました。

 





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